空も山も風も

yahooブログから引っ越しました。

最終回 【富士山と展望】

【富士山と展望】

 富士山の展望で一番印象に残っているのは、やはり台風一過の晴天に眺めた頂上から展
望です。あまり知られていませんが、最高峰の剣ヶ峰にある気象ドームの隣りに、物干し
台のような展望台があり階段を使って登れるようになっています。ここから見ると、早朝
の人々が活動する前の富士宮の町の様子が足元に文字どうり手に取るように見えます。 
ちなみにこの展望台、一般人が到達出来る日本最高点で、三角点+2メートルの3778
メートルぐらいの標高です。
 頂上から右回りにお鉢を巡ると、大沢崩れの頭を経て第2の高点白山岳に着きます。こ
こからは、八ヶ岳と甲斐駒の間の中央構造線の谷を通して、北アルプスが意外に近く見え
たことを思い出します。

 山座同定(当時そのような言葉は知りませんでした)は、二十万分一地勢図を張り合わ
せてオリエンテーリングで使うシルバーコンパスで色々と試みましたが、近くの箱根(金
時山、矢倉山がよく目立ちます)、丹沢、道志あたりはなんとか分かりましたが、奥多摩
秩父方面となると、尾根が幾重にも重なって、山の特定が困難でした。これは、富士山の
場合、すべて山を見下ろすため尾根がスカイラインとならず、前後の尾根でコントラスト
が得られないためだと思います。

 平地からの展望で、経験的に分かったことがあります。夏場に東京からは、富士山がな
かなか見えませんが、富士山にいた4年間で新宿の高層ビル群が望めたのは、台風一過の
一度だけでした。横浜あたりもほとんど同じですが、湘南の江ノ島から三浦半島、さらに
房総半島の南端の館山方面は、日中何度も見えた記憶があります。
 やはり、川崎、横浜あたりの工業地帯や、人口密集地での自動車の影響などで、横浜と
湘南の間のどこかに、富士山の見え方の断層があるのではないかと思います。

 9月になると、短かった富士山の山小屋の営業も終わりです。布団を箱にしまい、ガラ
ス戸を片づけ雨戸を全部しめて、ベンチになっていた材木を外したときと逆の順番に外か
ら積み上げてボルトで固定すると、来年の小屋開きまで、山小屋はまた長い眠りにつきま
す。

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